認知症
高齢化社会を迎えて、当院の在宅医療を受けていただいている方の中にも、認知症を患っている方も多くいらっしゃいます。認知症を治すという治療法が見つかっていません。けれども、できるだけ認知症の症状を軽くして、進行を遅らせることを薬によって期待できます。
認知症の症状
- 朝食などの最近のことをすぐに忘れてしまう
- 大きな出来事(先週、家族全員で葬儀に行ったこと)をすぐに忘れてしまう
- 日付があやふやになる
- 気分が憂うつになる
- 自分のものを盗られたと言う など
これらの症状が出現してくる認知症。うまく付き合えるようにしていきたいです。
認知症は、「三大認知症」に分けられており、それぞれの解説です。
アルツハイマー型認知症
最もよく聞く認知症の名前です。
初発症状は、「ごく最近の記憶の障害」であり、 すぐ先ほど話題にしたことを忘れる、さらには結婚式やお葬式にに参加したような「大きな出来事」をすぐ翌日には忘れてしまう事があると、アルツハイマーの疑いは高いです。「短期記憶を評価するテスト」を行い、日常生活できる事とできない事を評価するために作業能力のテストも行います。
また脳卒中や脳腫瘍といった脳そのものに原因がないか、さらに、アルツハイマー型認知症では脳の「海馬」の委縮が早期から起こることが知られているため、それらを確認するため、頭部MRIを撮ることで診断を行います。
【治療法】
初期段階の軽度から中等度の時期には、アリセプトやレミニール、イクセロンパッチ/リバスタッチパッチという薬が病気の進行を遅らせることができます。さらに中等度以上であれば、メマリーという薬も併用することを考慮します。また記憶の障害や認知機能障害などがあるとしまい忘れた財布を盗まれたといったり、自宅にいるのに自宅に帰るといって徘徊をするなどの症状がでることがありますので、こういった症状に対しては精神安定薬などが効果的な場合があります。
脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血などの血管の破綻による脳卒中後に認知症が生じます。診断には脳卒中の既往歴があるかどうか、また頭部CTや頭部MRIなどによる脳内の病変をMRIにて検査します。アルツハイマー型認知症と異なり、「最近の記憶障害」が初発症状ではないことも多いです。
【治療法】
脳卒中が再発すると、認知症の症状が進んでしまいますので、再発防止のために脳卒中の原因でとなる高血圧や高脂血症の治療、血液をさらさらにする治療などを継続内服してもらいます。またうつ病やせん妄、物盗られ妄想などが合併することがあるために、抗うつ薬であったり精神安定薬を併用することもあります。
レビー小体病
「実際にないのに見えてしまう。という幻視」、「物忘れが日によって変動してしまい、良くなったり悪くなったりする」、「パーキンソン病のように手が震える、四肢の動きが悪くなる、小刻み歩行」などの症状が出現します。
これらの特有な症状の有無などを検討し、画像として頭部CTや頭部MRI、さらに核医学検査などを撮像することで診断します。
【治療法】
近年、アルツハイマー型認知症の治療薬であるアリセプトが効果的であるとされ、継続内服いただきます。また、幻視などに対しては精神安定薬を併用します。