軽度認知機能障害
認知症には大きく分けて4つの分類がありますが、その中でも最も割合の高い疾患は、皆様もよく耳にする『アルツハイマー型認知症』です。
アルツハイマーはまだ治療することができるまでには至っておらず、その原因も完全には解明されていません。ただ、進行を遅らせることは可能な疾患あり、ある日突然発症する疾患ではありません。徐々に脳内に原因たんぱくが蓄積していき、症状を自覚するほどになる前の段階に、『軽度認知機能障害(MCI)』と呼ばれる加齢に伴う物忘れと認知症の間のグレーゾーンが存在します。
MCIは認知症発症の一歩手前であり、1年間で約10%、5年では50%以上の方が認知症へと進行してしまう段階ですが、近年の研究ではMCIの時点で適切な予防をすると、その後の認知症への進行を抑えられる可能性があるとされてきました。その回復率は約30%ほどです。
・代表的症状:趣味や好みが変わったり、楽しめなくなった。同じ話を初めてのように何度も話す。お金の計算やスケジュール管理ができなくなった。
などの症状が続くようでしたら、一度医療機関への相談をしてみましょう。ここで、MCIの診断を受けた人すべてが認知症となるわけではありません。しかし、MCIというものは健康上、生活上において何らかのリスクを抱えている状態でもあります。そのような生活を変えなくてはならないと考えましょう。
MCIと診断されたら
では、どのような対応をするのかと言いますと、場合よっては微量の抗認知症薬を開始することもありますし、生活改善としては、1,適度な運動習慣を確保することで、脳血流の改善やリフレッシュ効果が得られます。2,脳に良い刺激となるリクリエーション活動に参加することで認知機能の低下を抑制することができます。3,高血圧や糖尿病はリスク因子となりますので、生活習慣病の治療を行い、食生活を含めて健康的な生活をしましょう。4,自分の歯が20本以上の方は認知症のリスクが少ないとされており、口腔内環境をきれいに整えましょう。
そして、MCIと診断されてから家族の方とともに、認知症とは何かを事前に知っておき、自分のことを現実として見つめてみて、人生会議を開くということもこれからの人生の中で大切な機会となるかもしれません。
軽度認知障害(MCI)は、心構えをより早い段階で行うための指標でもあります。MCIという診断を深刻に捉えすぎることなく、よりよい生活を作っていくきっかけとして利用していきましょう。